蛇にピアス
2009年 06月 17日
6年前にすばる文学新人賞を受賞し、作者が若く金髪の現代的女性で会ったことから話題になった作品。
星2つの理由は、内容はこすい、だけど主人公ルイの恋人アマが人を殺したことを知った後、警察にばれないよう、恋人の髪形ファッションを変えさせるあたりの描写と、その恋人を殺した愛人シバを、やはり警察に疑われないよう証拠隠滅を図るところが、女心らし矛盾でおもしろかったため。物語を読ませる力はある。
出版社は第二の山田エミや日本版「上海ベイビー」を作者に望んだのだろうけど、その目論見が目立ちすぎる。作者が書きたいのはこういう物語ではなかっただろうと思う。「蛇うとビアス」はまだ作者の「もう一人の自分」の延長線上にしかない。
「一発屋」とみられるこの作者の別の作品も読みたいと思った。
草葉の陰で見つけたもの(大田十折・光文社)★★★☆☆
おなじく若い作者で、20歳の小説宝石文学賞受賞作。
はじめは「出版社が高卒作家で話題を得ようとしたのだろう」と思えるわかりやすい「文学的でなさ」だったけど、後半の「電子、呼ぶ声」は「この作者は本当に力量があるのかも」と思えた。
さらし首になった盗人だけど、意識はあり、さらし首の視点から世の中の人を眺めている。視点は面白いけど、さらし首が恋心を寄せるまでになる娘の事情など工夫がなさすぎる。情のあり方の描写も作者が若いためか、迫るものがない。しかし2作目「電子、呼ぶ声」は面白かったので、この作者はSFを書いたら面白いのではないか。