ハローワークの女(ひと)
2010年 05月 14日
最近、ハローワークで働くある女性が話題になったことがあった。その女性を描いた作品が、生きている作家としては最高値の35億円で売買されたからだ。
その作家の名前はルシアン・フロイト。精神分析で有名な精神学者フロイトの孫である。ふつう絵画作品の価値は作家の死後に決まり、生きている作家の作品が高値で取引されることは非常にすくない。しかしフロイト作品はコレクターが多く、作品は値が非常に高い。
そんな「生ける神話」フロイトの作品の、史上最高値をつけた作品がこちら。
フロイトは2005年には著名なスーパーモデル・ケイトモスを描いている。こちらの作品はおよそ8億円で取引されたという。
この両作品のモデルは「ものすごく細い」「超有名人な美女」と「異様に太っている」「そこらへんにいそうなおばさん」ととても対照的だけど、作品の訴えかける力は売値に比例して、「異様に太っている」作品の方が強い。フロイトはすでに87歳、87歳の人間がこの力強い作品を描いたことにも驚きだ。またモデルの女性が職業安定所の職員という不景気・求職の時代における親切な天使を描いているのに、そこにはモデルの持つ美徳・美しさよりも人間の本質にある醜悪さ・物凄さ・怠惰さが描かれている。なにか解説をつけなくても、圧倒される作品だ。
「今の私を誰かが描いてくれるとしたら、私の中にある何が描かれるのだろう?」そんなことを思った。