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古樹と大蛇

古樹と大蛇_c0192202_173450.jpg昨日、妙行寺へお墓参りに行った。ご住職の奥様と立ち話をした。
境内にあるサルスベリは樹齢400年以上たっているが、中の洞にアオダイショウが住んでおり、時折でてくる。

寺にある樹齢400年の古樹と大蛇。
まるでアダムとイブにりんごを食べさせ楽園追放へと誘う蛇のようだ。ピンク色の花をつけた木の中に緑色の生き物がいる様子を思い浮かべた。

お墓においてあるノートを見たら、兄の命日である8月11日と28日に兄の友人達が墓参りに来てくれていた。28日私は何をしていただろう?日記を見ると、やたらと生前の兄の話が思い出されて旧陸軍と多摩近辺の関係、八王子の幽霊のことを調べている。

兄の話とはこうだ。
高校生の時、原付バイクで多摩川の橋(是正橋か)の上で信号待ちをしている時、たくさんの人の足音が聞こえて、ふと橋の下をみると、旧陸軍の兵士たちが河原を行進している。一個小隊ごとに分かれた軍人たちで、いくつも続いている。顔付きは若く、軍人になって間もないようだ。「えっ」と思って前を見、もう一度下を見ているとそこには軍人たちの姿も音も消えていた。

兄の推測では、戦時中に兵隊にとられ、そしておそらくは死んでいった人達が自分達のことを知って欲しくて現れたのだろう、ということだった。兄は霊(地縛霊といってた)が時々見えると言っていたし、母もときどきそういうことがあったので素直に話を聞いた。

古樹と大蛇_c0192202_1741194.gif私の住む稲城市には横田基地の米軍兵士たちのためのリクリエーション施設がある。旧陸軍の弾丸製造工場があったところで、戦後米軍に占領された。日本人の立ち入りは今も禁じられており(1年に一日だけ公開されている)、当時の面影がそのまま残っているという。

ここから車で10分程度の場所にこどもの国がある。こどもの国もまた旧陸軍の弾丸製造工場出会った場所。調べてみると日本へ連れてきた朝鮮人1000人を使役し工場を作り、女子学生達を従事させて弾作りをしていたという。当時を振り返った女学生の一人は「自分たちの作った弾が、世界のどこかで誰かを傷つけていると思うとたまらなかった」という。妙行寺をまっすぐ相模王野の方面に進んだところに陸軍の基地がった。この多摩近辺は陸軍が都会から離れた軍事活動を行うには最適の場所だったのだ。

古樹と大蛇_c0192202_1744123.gifさて、兄が見た兵士たちは誰だったのか?近くには調布飛行場があり、戦時中には東京を守るため、日夜攻撃を続ける米軍機B29を撃墜するため特攻が飛び立ったという。戦局が悪化した終戦直前には兵士たちは首都を守るためではなく、ただ無駄に死にゆくために九州に集められ沖縄に散っていった。兄が見たという兵士たちは徴兵され軍事訓練を受けていた若者達に違いない。

兄の友人が兄のことを思い出してわざわざお墓参りに来てくれたから、兄の魂も近くに寄ってきており、急に私は兄が見たという兵士たちのことを調べたくなったのだろう。

そして、その兄もすでにいない。
妙行寺の古樹に住む大蛇は、森羅万象を思い知らせる存在であるようになんとなく感じた。
by office-maki | 2010-09-10 12:37 | 日記 | Comments(0)

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