「写楽展」がすごい
2011年 05月 08日
非常に展示方法が良い。役者のブロマイド絵がほとんどだから、その物語の内容が説明され、どんな場面でどの作品と対になっているかがわかる。例えばこの上記の2枚は、左:一平を襲い金を奪おうとする江戸兵衛、右:江戸兵衛に襲われ切りかかろうとする一平(演目:恋女房染め分け手綱)。
また、同じ役者の同じ演目を表した写楽・豊国・春英の作品が3枚並べられて、作家の個性が伺える。左側:勝川春英、右側:写楽。二人とも三代目沢村宗十郎の「大岸蔵人」を描いている。
浮世絵は大変痛みやすく、美しい作品は非常に貴重。今回展示されているのはその中でも特別美しい保存状態の作品で、海外からの借り物だ。写楽の作品の多くを所蔵しているフランス・ギメ美術館などが作品への放射能を恐れ、今回の展示会が開催されるかがたいへん心配されたが、会期が1カ月遅れただけで、ほぼすべての作品が一堂に会した。
今回展示の浮世絵作品のほとんどがガラスケースではなく、特殊な額縁に入っている。そのため、至近距離で作品を鑑賞することができる。ガラスケースが果たす湿度・温度等の保存の役割をこの薄い額縁が果たしているという。所蔵している美術館によって額縁が異なるのも面白かった。
浮世絵は、保存が大変難しい。そのうえ修復もできないから、美しい状態の作品は、まさに奇跡だ。なにせ230年前の和紙の上の印刷物だ。そのため通常は1カ月展示するとその後1年半から3年間はその作品を見ることができない。写楽展は東京国立博物館で6月12日までなのでおみのがしなく。
東博物館の「写楽展」は、作品数が多いので、ゆっくり回ったら2時間では足らないかも知れないが、同時期に千葉市美術館でもボストン美術館所蔵の浮世絵展を行っていて、そちらもたいへん良いという噂です。