引き続き吉本有里さんの話。
2011年 07月 19日
世の中には自分が産まれる前の事を覚えている人間がいる。彼女の息子もそんな子供だった。彼は自分が母親の胎内に宿る前のことを覚えていた。
「僕じゃない他の子が、お母さんのお腹の中に入ろうとしていた。僕はなんとしても生まれたかったから、その子を蹴落としてお母さんのお腹の中に飛び込んだんだ。」
吉本有里さん自身は、妊娠した時「風の音が聞こえる場所で子供を産みたい」と思い、同時にお腹から「風の音が聞こえる場所で生まれたい」という子供の声が聞こえたそうだ。
そんな話を聞きながら、思った。
「ああ、私も『この両親から生まれたい』と思って、飛び込んで来たんだろうな。」
母は、私と兄が生まれる前後に子供3人を死産・流産している。私は兄と姉達4人を無くしているのだ。で、思った。「やっぱり姉達も兄も、死んだ後も大事に思ってくれる母から生まれたかったんだろうな」って。きっと生まれる前には、人生のあらすじを読んでいて、何歳くらいに死ぬかも含めて、どんな人生を歩むかわかってるに違いない。今は忘れてしまっているけれども。
そんな事を考えながら家に帰ったら母が「今日何かあった?」と飛びついて来た。私の姿が見えて、何度も大きな叫び声を出してたんだって。
前にも数度、母は私の生霊(?)を見ている。どれも「旅行先に靴下を持って行くのを忘れて悔しがってる私」、「旅行先で笑ってる私」等くだらないもの(普通は生霊が現れるってのは死ぬ直前だそうだ)。
この日はラフターで大声で笑ってたから、そんな私の姿が母に見えたという訳。「もうちょっとましな理由で現れろよ、私の魂‥」と我ながら思う。
母にこの事をいったら「たぶんマキちゃんは二人いるんだろうね。」とぽつんといった。うん、きっと姉達や兄が私にくっついているに違いない。自分たちの形が無いから、私の姿をして私の事を母に伝えに行くのだろう。「どうせいるんだったら、素敵な男性を私の方に引っ張ってくれればいいのに」なんて俗なことを願う私だった。