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東博「ボストン美術館 日本美術の至宝」展 感想2

東博「ボストン美術館 日本美術の至宝」展 感想2_c0192202_2017898.jpg東博「ボストン美術館 日本美術の至宝」展をもう一度見て来た。会場付近ではお客さんが「いい展覧会だったね」と言っていたけど、ほんとに素晴らしい展覧会。展示会場もいいし、どの作品の表装も作品をひき立てたいへん美しい。図録には表装まで入っていないのが非常に残念。

以下、作品の感想なのだけど、なんの本も見ず勉強せず好き勝手に綴っているので「この勉強不足者が!間違ってるだろう!」とおしかりにならないで下さいね♪

橋本雅邦「騎龍弁天」(部分)。まるで子宮からor宇宙から生命が誕生する様子を描いているよう。この新しい感覚を明治にやってるのがすごい!


東博「ボストン美術館 日本美術の至宝」展 感想2_c0192202_20203678.jpg一字金輪像(鎌倉時代)(部分)。20室に制作過程の説明が展示されている。たいへん美しい絵だけど、何よりもこの日輪がスゴイ!敦煌壁画でいくつもこういう日輪を見たけど、日本でも描かれていたんだなあ。ドラッグでトリップしたらこんな日輪が見えるのだろうか?


東博「ボストン美術館 日本美術の至宝」展 感想2_c0192202_20235032.jpgその赤がチベット仏教の絵画のような強烈な印象を与える「馬頭観音菩薩像」(平安時代)(部分)。台座部分の文様も非常に素晴らしかったのだけど、私が気になったのは、画面左側の手にもつ水瓶。東博の法隆寺宝物館に展示されている「竜首水瓶」に似ている。作者はこれを見たのかな?

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「瀟湘八景図屏風」。画像は、ボストン美術館所蔵品ではなく、同じような時期に描かれたもの。当時好まれた画題のようだ。湿度が高くいつもけむってて、岩肌が目立つ中国・湖南省や桂林の風景を思い出す。見た事も無い中国南部の風景をよく描いたものだなあ。まさにそっくり。南画と呼ばれた画題を見て「ああ、中国のあの辺の土地がモチーフか」と作品を見てわかる自分にもちょっと感心(笑)。
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東博「ボストン美術館 日本美術の至宝」展 感想2_c0192202_20443533.jpg外国関係の作品はどれも興味深かったけど、なかでも興味深かったのが「韃靼人狩猟図」(室町時代、部分)。だったん人?解説ではモンゴル人とあった。モンゴル人?タタール族?描かれている人物が着ている服ははなるほど1人は見慣れたモンゴル民族衣装のようだ。でも他は頭頂部の毛が剃られていて、ほかの民族のよう(もしかして日本の風習にそって描いてみた?)。勇壮な騎馬民族のイメージを描いたものなのかなあ。文化の交流を表してるなあと感心。

天心らは作品を選ぶ際に、ひたすら「外国との交流をあわらした作品」「西洋にもある物、もしくは共感できる作品」というモノサシにこだわった様子。龍(ドラゴン)や芥子(ポピー)、狩猟など本当に理解しやすい絵が多い。

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「王昭君図」(江戸)。写真は中国内蒙古自治区フフホト郊外にある王昭君の墓地に立つ像。

漢民族の王昭君は、国を守るためにモンゴル人(と、モンゴル人に聞いたが、日本では”匈奴”人)に嫁いだ。後にも先にも誇り高き漢民族が他民族に嫁いだのは王昭君のみ。当時の漢民族からしたら格下の野蛮な民族に嫁がされ、プライドは大きく傷ついたに違いないのに、彼女は嫌がらず草原への道を目指した(ちなみに王昭君の夫は、モンゴル人妻と漢民族妻とウイグル民族の妻を持ち異民族の和合をめざした、らしい)。今も王昭君は、中国政府の目指す”異民族の融合”を実践した存在として大きな尊敬を集めている。

王昭君の夫達は彼女を女奴隷としてではなく妻としして大切にあつかった。王昭君はモンゴル人の言葉を覚え、モンゴル人女性と同じように馬に乗り、草原(蒙古自治区の省都フフホトはモンゴル語で「青い城」、すなわち草原に囲まれた豊かな土地だった事を示す)と夫を愛し、異民族の戦いが起きそうになると他の妻達とともに和解に勤めた。
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ある時、漢から使者がやってきて、「一緒に漢へ帰りましょう。天子もそれを望んでいる」と言うと、(漢民族がモンゴルに攻め入る気なのを見て取った王昭君は)モンゴル語で「私はモンゴル人の妻。すなわちモンゴル人です」と答え、相手にしなかった(使者は言葉がわからず、王昭君と認める事ができずに帰ったとも)と伝説は語る(すくなくても現代のモンゴル族達はそう語る)。楊貴妃、西施、貂嬋とならんで中国四大美人のひとり(そして唯一の善女)。

だいぶ脱線したが、そんなわけで興味を持って作品を鑑賞した。日本でも彼女は讃えられていたのか〜。ふむ、琵琶を抱きしめ馬に乗る姿はたしかに平和を愛する自己犠牲をいとわない、けなげな女性を表しているようだ。「内助の功」の徳を教えるための絵かな?

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宗達派「芥子図屏風」(江戸、部分)。「まるで現代の作品みたいね」と、隣で観覧しているお客さん。芥子の花が江戸時代に日本にあったんだなあ。それにしても本当に現代っぽい作品。きれい!!

若冲の作品も注目を集めていた。私も大好きだけど、人気あるなあ若冲。オウムも立派な事!西洋やモンゴル(飾りの部分辺りがモンゴルの装飾品の色と柄に似ている)の絵のようだ。


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最後は曾我蕭白「雲竜図」(江戸、部分)。ところどころにジャクソン・ポロックのようなドロッピング。墨でドロッピングか〜。さすがの私も広いアトリエがあった学生時代までしかドロッピングはしていない。周りが超汚れるし、絵具を大量に使うもの。蕭白、ほんとうに現代っぽい〜〜!

まだまだ語り足りないけど、ここまで。
大事に守られて来た物は、100年以上の時を経つと、つくも神になるのだという。これらボストン美術館の日本美術作品たちは夜、どんな集まりをしてるのかしらん。蕭白の龍があばれ、若冲の羅漢達が蕭白の李白と酒を飲み、その周りでは仏達が語り合っている。すごくにぎやかで楽しそうだなあ、と思うのだった。

やっぱり書きたりないので、書き足し。

天心は、茨城県五浦に才能ある日本画家達を集め、制作させ、日本美術の生育に勤めた。昨年の津波で五浦にある天心ゆかりの建物が津波で流され、その事も、東北の被害にあった文化財を守る事がたいへんだることを多くの日本人が知っているせいか、館内に置かれている「文化財保護への募金箱」へはいつもよりも多くの人がお金を落としていた。

天心が選んだ作品達は、どれも外国に日本という国の文化と芸術を紹介するには最高のものばかりだった。天心のおかげで日本という国は素晴らしい文化を持った国だと、多くのアメリカ人が思ったに違いない。

ボストン美術館へ運んだ日本の作品達が、日本の代表的博物館である東博に展示され、天心もほっとしているに違いない。飲兵衛の天心は、つくも神たちと一緒に、久しぶりの日本酒を夜の会場での交わしていることだろう。
by office-maki | 2012-04-02 21:27 | 東博が好き | Comments(0)

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