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バルテュスの作品がやっぱりいい

バルテュスの作品がやっぱりいい_c0192202_15495174.png「将来、絵を描き続けるのなら、絶対にバルテュス展を見に行きなさい。」

とは、東京駅ステーションギャラリーで「バルテュス展」が1993年に開催された時の、今は亡き美術の先生からの言葉。当時私は高校3年生。

当時の東京駅ステーションギャラリーは、うちっぱなしのレンガが生々しい、倉庫のようなギャラリーで、NYのギャラリーのような独特の美しいたたずまいだった(2012年10月再オープンしたらしいが、まだ行っていない)。
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バルテュスの絵は、非常に構成力にあふれるばかりでなく、エロティックな寓意にあふれている。そんなバルテュスの作品を、制服姿で見に行ったことをよく覚えている。

当時はバルテュスの作品の何処がいいのか分からなかったから。でも「自分には理解できない大人な世界がこの絵には隠されているらしい。偉大な作家なんだ」と想像してことを覚えている。

バルテュス。
20世紀最後の巨匠。20世紀の生ける神話。


なぜバルテュスが「20世紀の生ける神話」と言われるかというと、彼の作品が素晴らしいからだけではない。彼の交友関係がものすごいからだ。しかも親の代からのすでにスゴイ交遊が始まっている。

バルテュス(Balthus, 1908〜2001年)、本名はBalthasar Michel Klossowski de Rola。
母親エリザベートはユダヤ系ドイツ人の画家。父親ピエール・クロスフスキーはポーランドの貴族の末裔で画家。クロスフスキーは親の代からフランスに住んでいた。

お金持ちで芸術を愛する二人の周りに集る人々も、当然アーティストばかり。画家ボナールやマティスにドラン。バレ−のニジンスキー。父親らが「セザンヌに会いに行く」と言い出した時には少年バルテュスもこれらのメンバーとサント=ビクトワール山を見に行っている。

両親が離婚してからも、スゴイ交友関係は続く。義理の父親(母親の恋人)は、あの有名な詩人のリルケ。ジャコメッティーの親友とお互いを称し、アンドレ・ブルトン、ピカソ、アンドレ・マルロー、フェリーニ、ジューヴ、カミュなど。彼の人生をたどれば、栄光の20世紀パリのアート史をだいたい知る事ができるほど。まさに生ける神話なのだった。

少女たちを大胆な構図でエロティックに描いたバルテュス。本人は「自分は芸術家(アーティスト)ではなく、画家(職人)だ」と語ったらしいが、92年間の人生の間に大量に絵を描いている。

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この初期の絵が一番有名だ。なるほど下の画像を見ると、画廊や美術館に並んでいたら、今だってひときわ注目をあつめそうだ。
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バルテュスの作品は、少女がみだらなポーズをしていることで有名。そしてこの作品に描かれている、少女・鏡・猫は終生彼の作品にたびたび現れる。
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この作品も子供がゲームにしている様子を表しながら「男女の恋愛の緊張感をゲームに乗っ取って描いたもので、君たち女子高生には、とてもじゃないが言えない大人の秘密がいっぱいある」と予備校の講師は言っていた。
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今思うと、この男の子の姿は、男性器が勃起した様子を表しているのかな?開いた足は、きっとセックスの寓意だ。今から思えば、バルテュスの絵には全然、すごい秘密なぞ隠れていなかった。気がついた大人がちょっと頬を赤らめる程度の秘め事なエロティックさが隠されていたのだった(笑)。
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この絵も、少女の股間部をまるで差すようなテーブル。セックスの寓意だろう。意味ありげに尻を突き上げて本を読む少年は、セックスしている男の体位か、後ろから受け入れている女の体位の寓意だろう(今思ったけど、こんなこと自分の公開日記で書いて、いいのかしら、私??(笑))
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こちらもバルテュスの有名な初期の作品。バルテュスは、お金持ちのお嬢様アントワネットに恋をしていた。でもアントワネットには婚約者もいたから実らぬ苦しい恋だった(後日、すったもんだのあげく二人は結婚している)。
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こちらはその前にバルテュスが描いた「嵐が丘」の挿絵。この絵が、巨匠バルテュスを作りあげる原点となる。そんな様子を「嵐が丘」のキースとキャシーに例えて描いたのがこの絵。生意気で奔放、でも恋しているキャシーをふんずけてやりたい(&征服したい=セックスしたい)キースの気持ちがよく表されている(笑)。


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意味がありそうでなさそうな絵。意味が解けない絵をバルテュスはたくさん描いている。本を読むと、バルテュスは当初からの絵に、どんどん他のものを描きたしてゆくタイプだったらしいから、それでこんな不思議な理屈が通らない絵が出来上がっていったらしい。
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東京駅ステーションギャラリーで展示された作品は小さいものばかりだったから、てっきり小さい絵ばかりを描いていたと思っていた。とんでもない。最近本で知ったのだけど、バルテュスの大作は、横3m、縦2mあるものばかりだ。相当大きい!
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バルテュスは古城などを買い取り、そういったお城で優雅な生活を送った成功者としても知られている。
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写真は、バルテュスが、34歳年下の日本人の奥様と結婚し、夫婦で住んだグラン・シャレ(スイス/ローザンヌ地方)。この旧旅籠を購入するためにバルテュスは「5枚の大作を描く」ことを画廊に約束して、お金を工面したらしい(バルテュスの優雅な生活)。1枚1000万円として、5枚でざっと5000万円。5000万円でこれだけのお城が手に入るとは思わないけれど、まあ作品1枚は1000〜2000万円だったのだろう。きっと売値はこの2〜3倍。す〜ご〜い〜!!

現代でもバルテュスは人気があって、若い作家達がバルテュスの作品を実体化した写真作品を作っていた。
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絵を見るとセクシーとは思わなかったけど、写真をみるとむちゃくちゃエロだ〜!
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こちらは日本の若い作家さんの作品。人々をとらえて離さないバルテュスの作品。学ぶ点がたくさんあるのだった!

バルテュスはアントワネットとの間に二人の子供、節子夫人との間にも1人(この方が私とほとんど同じ年齢)いる。エロティックな足を広げた少女の絵ばかりを描いたバルテュス。「モデルの少女たちと肉体関係はなかったのか?」ときっと誰しもが思う。「なかったはずがない」と、私は思う。現に24歳の時彼が愛したアントワネットは20歳の、54歳の時愛した節子夫人は当時20歳。ロリータだ。西洋の人々は、性欲に対してはすごく忠実であっけらかんとしている。まして芸術家はその典型だ。恋愛対象が20歳以下だろうと、法に触れなければ(13歳以下かな?)問題にならない。

バルテュスは生涯、自分の絵が「エロティックだ」と評判されることを嫌った。「自分にとって少女たちは美の象徴なんだ、そんな汚らしい情念じゃないんだ」と主張した。でも誰がみても、大人の情事を軽妙にあしらった作品であることが一目瞭然。エロでいいじゃないかと思う。エロさにみんなが惹かれてゆくのだから!
Commented by Mr. Collins at 2013-08-21 09:48 x
スイスに仕事でいたこともあり、バルテュスは気になる画家でした。名嘉真麻希さんのこのブログ、大変参考になりました。お礼まで。
Commented by office-maki at 2013-08-23 09:05
Mr. Collins様:
個人的偏見にもとずいて好き勝手に書いていますが(笑)、バルテュスの作品を好きになって頂けたら幸いに思います(^_^)♪
Commented by office-maki at 2013-11-20 10:41
来年2014年4月〜6月に都美館でバルテュス展が開催されますね!私も今からすごく楽しみです。友人の指摘で気がつきましたが、日本の「萌え」少女キャラとバルテュスの絵、似ています。オタク文化と巨匠が非常に似ているのが面白い!
Commented by mizu at 2014-02-20 01:17 x
断捨離の広告から入ってきました。こちらのブログ、興味を引くものが多かったです。クリスマスに行った初NYのメトロポリタンで一番好きだった(過去形)バルテュスの特別展をしていたので驚いた~しっかり見てきました。20~30年ぐらい前に京都で見たことがあった。イタリアご一緒できたらいいな~とも思いました。またお邪魔させてください。変な日本語ですみません。
Commented by office-maki at 2014-02-24 17:48
mizu様:「断捨離の広告から入ってきました。」私は断捨離に反対派なんですが、何かにこのブログ出てたのかしら??(笑)都美館のバルテュス展また行かれたら、また違って見えるかもしれません(^_^)♪
Commented by msya at 2014-03-17 16:44 x
バルテュス展にいこうか迷っていましたが、このブログでバルテュスの作風がよくわかり実物を見に行きたくなりました、
Commented by mamrta at 2014-05-29 16:30 x
バルテュス展を鑑賞したあとで、ブログ拝見しました。
大変参考になりました。
なぜか、「京都まで追っかけしようかな」とまで思っています!
Commented by office-maki at 2014-06-17 19:09
mamrta様:うわあ!気がつくのが遅くて大変失礼しました(><)作品を楽しむ足しにこのブログがなっていれば私もうれしいですm( _ _ )m。京都とバルテュス、似合いますよね。京都でご覧になったら、是非感想を教えて頂ければ幸いです(^_^)
Commented by office-maki at 2014-08-19 09:48
先日も日曜美術館でバルテュスを取り上げていました。バルテュスの画業と関わった女性とアトリエが紹介され、最後に節子夫人が登場。節子夫人は本当に素敵な女性で私も憧れますが、夫が自分と結婚する前の女性関係を夫の死後も見なければならないのは嫌だろうなあ、私なら嫉妬するな‥‥‥と一般女性目線で思ってしまいました。偉大で年上の夫の偉業を紹介するのも残された妻としての仕事なのかもしれませんが、私ならできないから、やっぱりビッグマンとは結婚できないのでしょうね!(><)
by office-maki | 2013-01-03 01:06 | アートな話 | Comments(9)

制作した作品と、日々の感動を自由気ままにアップしています。下の各カテゴリ(●絵、★文章)もどうぞご覧下さい(^-^)♪ なかま まき


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