「東博の仏像だけ見てたんじゃだめだよ。松岡美術館に行かないと。」
とは、彫刻グループのリーダーの発言。松岡美術館?何処にあるの??そんなわけで、仏像好き達と数名で松岡美術館に行った。
松岡美術館は、個人コレクター:松岡清次郎氏が収集した作品1800点を管理&展示している、目黒にある美術館。庭園美術館のすぐそばにあるのだけど、私は一度も行った事がなかった。
ジャコメッティやエジプトの猫と神殿を飾った美しい乙女達がまず迎えてくれる。その次はヘンリームーアの巨大なブロンズ作品が並ぶ。この美術館があった敷地は、松岡清次郎さんの自宅があった場所で、彼はこのムーアの作品を芝生の庭に並べ、その横で家族でランチするのが夢だったそうだ。なるほど、家庭的な匂いがぴったりな作品たちだ。
次は、神々や仏の部屋。この北魏形式の観音像の美しいこと!法隆寺の百済観音や東洋館の巨大な観音像にもちょっと似ている。
うっとりするほど装飾が美しい。何気なく後ろも見てみると、鮮やかな色彩が残っていた。後で他の人たちにも聞くと彼らもしっかり気がついていた。むむむ、さすが仏像マニア達!(笑)。
ガンダーラの美しい菩薩たちがつける豪華な装飾。マカラ(怪魚)だろうか?
インドの神々達も並ぶ。カジュラホで見たようなセクシーなS字ラインの美しい女神たちもたくさんいた。そして「邪神」のようにも見える、明らかに異教の雰囲気をたたえた女神像などなど。
他にも、陶器、絵画など素晴らしい作品がたくさん展示されていた。豪快で派手で、ロマンティックで美しいものばかり。
松岡清次郎さん、豪快で、おおらかで、猫が好きで、ロマンチックなB型の親父だったにちがいない。
彼の選ぶ作品は、肩書きや由来ではなく、ひたすら
「綺麗だ、俺はこれが好きだ!」という作品がならぶ。見ていて非常に気持ちがいい。
公立の博物館や美術館が行う、「時代における位置づけ」などの基準をまるきり無視した、正しい作品の選び方を彼は行ったのであった。
それにしても彼の財力にも驚く。松岡清次郎は、貿易,不動産業,倉庫業,ホテル業と事業をしていたそうだけど、私が同じ額のお金を持っていたら、やはり彼と同じ作品を買いたいと思う作品ばかりが並んでいる。
彼の作品はどれも、気持ち良さそうに仲良く置かれている。館内の至る所に花が飾られていて、まるで彼のお家にあがっているような気分になる。松岡清次郎は、一度購入した作品をまた売るということを終世しなかったという。またこの美術館は、他の美術館から作品を借りて特別展を開く事もしないそうだ。だから作品達は、安心してここにいられるのだろう。
私立美術館のひとつの理想が、ここにある。松岡美術館は、本当にすばらしい美術館。見た後、うっとりと余韻に浸れるなんて、何年ぶりかの出来事だなあ!