図工室の思い出
2013年 04月 20日
教材準備室はすでになくなっていた。私の小学生の時の美術の先生は井伊先生といった。教材準備室は先生の休憩室で、白い高価な陶器のティーカップにポット、コーヒーに外国のクッキー、それに先生の描きかけの油絵作品などが並んでいた。およそ公立の小学校にふさわしくない、上級な特別の空間だった。
当然憧れの場所で、しょっちゅう遊びに友達と行くのだけど、たいていは他の先生が遊びに来ていて(やっぱり先生達もこの空間に憧れたのだろう)、子供は軽くあしらわれ追い返された。それでも風邪を引いた時などは、蜂蜜を入れた紅茶を振る舞ってくれたのだった。その後、私も女子美付属や芸大でたくさんの先生方のアトリエや作業場を見たけれど、あんな素敵な「隠れ家」はどこにもなかった。井伊先生、会いたいなあ。今も先生をされているのかしら?
先生の教材準備室を思い出し、大人の教室では簡単だけどコーヒーとお菓子を用意している。油絵の具とコーヒーの混じった匂いをかぐたびに、30年近く昔のことを思い出すのだった。
追加:先生の教材室にはもうひとつ、先生がつけていた強烈なオーディーコロンの匂いが混じっていたのを忘れていた!今度から私も香水振りかけて教室に行こうかなあ...(笑)。