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NHKラジオスペイン語講座2002年10月号 掲載 VIVA MEXICO !

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あまり季節感のないメキシコシティーでも秋を感じる時期となった。今回は秋にふさわしく、ロマンチックなコロニアル都市を訪ねる旅はいかがだろうか。メキシコというと「太陽の国」「マヤ・アステカの遺跡」といった印象が強いが、美しいコロニアル都市を通したメキシコの一面を今回は紹介したい。

コロニアル都市とは、16~18世紀、主に銀を中心に栄えた、グアナフアトやサカテカスなどのメキシコ中央高原北西部の植民地時代の様式をとどめた都市を指す。18世紀以後は産業が栄えず、メキシコ市から遠く離れていたために、さながらヨーロッパのような当時の様子がそのまま残された。19世紀にはこれらの植民地様式を残した都市、つまりはスペイン人支配階級と労働者であるメキシコ人との格差が激しい場所で前回紹介したイダルゴ神父や、アジェンデ、モレーロスといった英雄達が独立を目指して戦いを繰り広げた舞台ともなった。

今回のこの旅はメキシコ市から北へ向かい、Queretaloケレタロ、San Miguel de Agendeサン・ミゲール・デ・アジェンデ、San Luis Potosiサン・ルイス・ポトシ、Zacatecasサカテカス、Guanajuatoグアナフアトの5か所を訪ねる。

メキシコシティーの北方面バスターミナルを出発し、バスに揺られること3時間弱、最初のコロニアル都市ケレタロに到着だ。6世紀に建設されたケレタロは、世界文化遺産にも登録されているこじんまりとした美しい街である。街のシンボルである水道橋と石畳が当時のまま残され、のんびりぶらぶら歩くのが楽しい。歩き疲れたら洒落たカフェで一息ついて、この美しい景色を堪能しよう。

次の町はケレタロから車で1時間弱のサン・ミゲール・デ・アジェンデだ。アジェンデ美術学校で知られるこの街は、年配のアメリカ人が多く住む町としても知られている。芸術と植物あふれ、穏やかな気候、美しい教会、色とりどりの家並み、カンテラの光と石畳・・それらすべてがバロック音楽のようなハーモニーを奏でている。まるで楽園のような街である。あちこちに趣味のいいカフェが立ち並び、そこでは装飾品と花にあふれたパティオ中庭で一服することができる。贅沢な場所でゆったりとした時間を過ごす。それこそがこの街の楽しみ方だ。

アジェンデでゆっくり休んだら、サカテカスへ行く前にサン・ルイス・ポトシに寄ろう。サン・ルイス・ポトシは比較的新しい19世紀のアメリカの影響が強く残された町で、どっしりと重厚な雰囲気を残した建物がいくつか残されている。歴史地区は1時間弱でおよそ見ることができるので、一巡りして腹ごしらえを済ませたら再びバスのシートに戻ること3時間、いよいよサカテカスに到着だ。

サカテカスは標高2400メートルの山間に残された、銀の発掘で潤った街で、ここもまた世界文化遺産に登録されている。降雨量が極端に少なく、年中水不足に悩むこの街の空気はとても乾燥している。高度が高いため空気も薄く、そのうえ湿度も少ないので、容易に疲れる。のんびりと休みながら散策するのが一番だ。サカテカスのカテドラル教会のファサードはスペインのcheriguerra様式の見事な彫刻で覆われており、いかにこの街が繁栄したかが想像できる。そして夕暮れには街が一望できるブーファの丘に登り、この美しい街の様子を楽しもう。
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この街を支えた銀鉱山内部を見学することもできる。街中に花が植えられているトロッコはかつて山の中から銀を運び出す時に使われたものだ。サカテカスは見所の多い街でもあるが、ここまで来たら忘れずにラファエル・コノネル博物館へ足を運んで欲しい。ラファエル・コロネルはメキシコを代表する画家の一人で、神秘的な画風で知られる。ラファエル・コノネル博物館は、画家が住んだ屋敷のなかに彼が収集したマスクや人形が展示されている。収集物も素晴らしいが、なんといっても素晴らしいのはその建物。この屋敷はかつて修道院であった場所だが、昔礼拝堂で会った場所は天井が崩れ落ち、かつて人々が祈りをささげた場所は花や植物が生い茂っている。時間の経過のみがなせる美しさ。サカテカスで必見の場所である。

サカテカスからメキシコ市の方面へ南下し、キシコ市に次ぐ大都会Guadarajalaグアダラハラ、工業地帯Aguas Carientesアグアス・カリエンテス、革製品の町Leonレオンを通り過ぎ、グアナフアトへ道を急ごう。

サカテカスから5時間、「コロニアル都市の中でも、最も美しい街」と呼ばれるグアナフアトに到着だ。グアナフアトの美しい街並みはどんな人をもロマンチックにさせる魅力があり、多くのメキシコ人は「恋人とグアナフアトへ遊びに行き、新婚旅行はカンクンとコスメル(どちらも有名なカリブ海のリゾート地)へ行きたい」と夢見る。もちろん私もそのうちの一人だが、残念なことにカンクンとコスメルは女友達と、グアナフアトは一人で来てしまった。非常に残念である。

グアナフアトっ子が誇るグアナフアト大学は、18世紀に建てられたメキシコで一番古い大学だ。またグアナフアトは血生臭い独立戦争の戦火をくぐりぬけたことでも知られている。地下には迷路のように街道が張り巡らされ、白亜の瀟洒な大学の建物、美しい教会、華麗な劇場、独立軍が立てこもったアロンディガ、乾燥地帯のために、埋めた死体がそのままミイラとして残り、そのミイラを展示しているミイラ博物館など、まさに魅力がぎっしり詰まった宝石箱のような街、それがグアナフアトだ。

道沿いの各建物のバルコニーには花が飾られ、恋人達が愛を語るにふさわしい小道が至る所にある。黄昏時、町が一望できるピピラの丘に登り、少しずつカンテラにあかりが灯される街の様子を見守りながら、太陽の沈む様子を見れば、その美しさにため息が出るに違いない。

ピピラの丘から町に戻ると、カンテラ揺れる夜の街の中を、中世の吟遊詩人のようなマントを着たEstudiantes(学生の音楽隊)の美声が街中に響いている。間違いなく文化薫るグアナフアトの美しさは心に焼きつくに違いない。

他にも世界文化遺産の街Moleriaモレリア、Pueblaプエブラ、Tacosなど、中世ヨーロッパの面影を残した美しい街がメキシコという国の中にいくつもある。そんな街をひとつ訪ねるごとに、メキシコという国の奥深さを感じるのである。

10月号の表紙:「グアナフアト・口づけの小道」。
グアナフアトは中世の面影をよく残した町の一つ。ロマンチックな街角には恋人達の姿がよく似合う。
Commented by office-maki at 2009-03-02 00:02
実はこのグアナフアト、当時の恋人と訪れた。が、途中で喧嘩して、一人でサカテカスまで旅を続けた(笑)。でも楽しかった~!
by office-maki | 2008-12-25 03:44 | ★NHK西語講座2002 | Comments(1)

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