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中村昌樹さん「心の紙メール」が素晴らしすぎる

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先日、近所のクリニックに行った時、待ち合いで「心の紙メール」という本を手に取った。17年前に白血病で37歳で亡くなった中村昌樹さんが描いた絵画集だった。本の一番後ろにあった連絡先はご両親のものらしかったので、次の日葉書を書いたら、ご家族から手紙と本が贈られてきた。びっくりするとともに、じっくりと作品を拝見した。

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中村昌樹さんの作品は、今のわたしにはとても描けない。今の私と同じ年齢まで描いたはずだけど、これほどの絵を私はいまだかつて描けていない。

後日、お礼の手紙を持って行った。びっくりしたことに、歩いて7分の距離だった。17年前。彼がこんな絵を描いていた時、私は20歳で大学の2年。こんなにご近所で、何かしてあげられる事はなかったのかと悔やまれた。けれど17年前の、何にもわかっていない子供な美大生に、他人を思いやるような行動ができるはずもない。

兄の闘病中にも多くの患者さんの死を見た。兄が死んだ時、住職は「亡くなった仏さまたちは、私たちにこの人生が有限である事を教えてくれる」「生きる時間が長くても、たとえそれが短くても、それは寿命であり、役目をすべて果たして武博さんはあの世にいったんですよ」と言ってくれた。でも正直あまり慰めにならなかった。「それでも、どうして兄じゃなきゃいけなかったのか」と思ったから。

病気になった人はみな思っている。「どうして自分ばっかり苦しまなくちゃいけないのか。死ななくてはいけないのか」と。そして同時にそう思う自分を恥じてもいる。

でも、私は病気の人に声を大にしていいたい。「あなたのせいじゃない。あなたが悪いのではない。」「あなたがどうして病気にならなくてはいけなかったのか、私にも分からない。でも私も他の誰だってあなたと同じ病気にこれからなるかもしれない。」こんな言葉はまったくの励ましにも慰めにもならないけれど。

中村さんの絵と文章には、彼の愛や感謝と同時に、苦しみや葛藤や生きる事への望みをつなぐ希望があふれていた。

写真は中村昌樹さんの作品。どう頭をひねっても私にはこの絵は描けないが、彼の直面した出来事や感想に心から共感を覚えた。心から中村昌樹さんの冥福を祈るとともに、病気と戦っている人々にパワーを送る。そして私は作家として、生と死の間を漂いながらも制作を続けて行きたい。
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by office-maki | 2012-12-21 23:24 | ◆本が好き | Comments(0)

制作した作品と、日々の感動を自由気ままにアップしています。下の各カテゴリ(●絵、★文章)もどうぞご覧下さい(^-^)♪ なかま まき


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