バルテュスの作品がやっぱりいい
2013年 01月 03日
とは、東京駅ステーションギャラリーで「バルテュス展」が1993年に開催された時の、今は亡き美術の先生からの言葉。当時私は高校3年生。
当時の東京駅ステーションギャラリーは、うちっぱなしのレンガが生々しい、倉庫のようなギャラリーで、NYのギャラリーのような独特の美しいたたずまいだった(2012年10月再オープンしたらしいが、まだ行っていない)。
バルテュスの絵は、非常に構成力にあふれるばかりでなく、エロティックな寓意にあふれている。そんなバルテュスの作品を、制服姿で見に行ったことをよく覚えている。
当時はバルテュスの作品の何処がいいのか分からなかったから。でも「自分には理解できない大人な世界がこの絵には隠されているらしい。偉大な作家なんだ」と想像してことを覚えている。
バルテュス。
20世紀最後の巨匠。20世紀の生ける神話。
なぜバルテュスが「20世紀の生ける神話」と言われるかというと、彼の作品が素晴らしいからだけではない。彼の交友関係がものすごいからだ。しかも親の代からのすでにスゴイ交遊が始まっている。
バルテュス(Balthus, 1908〜2001年)、本名はBalthasar Michel Klossowski de Rola。
母親エリザベートはユダヤ系ドイツ人の画家。父親ピエール・クロスフスキーはポーランドの貴族の末裔で画家。クロスフスキーは親の代からフランスに住んでいた。
お金持ちで芸術を愛する二人の周りに集る人々も、当然アーティストばかり。画家ボナールやマティスにドラン。バレ−のニジンスキー。父親らが「セザンヌに会いに行く」と言い出した時には少年バルテュスもこれらのメンバーとサント=ビクトワール山を見に行っている。
両親が離婚してからも、スゴイ交友関係は続く。義理の父親(母親の恋人)は、あの有名な詩人のリルケ。ジャコメッティーの親友とお互いを称し、アンドレ・ブルトン、ピカソ、アンドレ・マルロー、フェリーニ、ジューヴ、カミュなど。彼の人生をたどれば、栄光の20世紀パリのアート史をだいたい知る事ができるほど。まさに生ける神話なのだった。
少女たちを大胆な構図でエロティックに描いたバルテュス。本人は「自分は芸術家(アーティスト)ではなく、画家(職人)だ」と語ったらしいが、92年間の人生の間に大量に絵を描いている。
現代でもバルテュスは人気があって、若い作家達がバルテュスの作品を実体化した写真作品を作っていた。
バルテュスはアントワネットとの間に二人の子供、節子夫人との間にも1人(この方が私とほとんど同じ年齢)いる。エロティックな足を広げた少女の絵ばかりを描いたバルテュス。「モデルの少女たちと肉体関係はなかったのか?」ときっと誰しもが思う。「なかったはずがない」と、私は思う。現に24歳の時彼が愛したアントワネットは20歳の、54歳の時愛した節子夫人は当時20歳。ロリータだ。西洋の人々は、性欲に対してはすごく忠実であっけらかんとしている。まして芸術家はその典型だ。恋愛対象が20歳以下だろうと、法に触れなければ(13歳以下かな?)問題にならない。
バルテュスは生涯、自分の絵が「エロティックだ」と評判されることを嫌った。「自分にとって少女たちは美の象徴なんだ、そんな汚らしい情念じゃないんだ」と主張した。でも誰がみても、大人の情事を軽妙にあしらった作品であることが一目瞭然。エロでいいじゃないかと思う。エロさにみんなが惹かれてゆくのだから!
個人的偏見にもとずいて好き勝手に書いていますが(笑)、バルテュスの作品を好きになって頂けたら幸いに思います(^_^)♪