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原田直次郎と黒田清輝が描いた肖像画

10月の近代美術ガイドのための原稿を用意している。原稿類は少し寝かせておいてから改めて書直した方がいいので、早めに書いておくためだ。展示室に足しげく通い、自分とその場の空気を馴染ませるのもその一環。
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今、18室に原田直次郎の描いた「三条実美」と黒田清輝の描いた「寺島宗則」の肖像画が隣同士で展示されている。それについて調べているのだけど、知れば知る程比較が出来て面白い。
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どちらの作品もモデルは既に死んでおり、写真を元に描いたと思われる作品。えらい人の肖像画なので原田や黒田の個性がでておらず「死んだ絵」になっていて、それも面白い。原田直次郎は才能はぴか一なのに、ドイツから意気揚々と帰国したところ、「外国かぶれが」と叩かれ、更にフランス帰りの黒田清輝に活躍の場を奪われた人物。巨大すぎる敵:黒田清輝のことが大嫌いだったはずだ。自分の死後、隣同士で作品が展示されるなんて思わなかっただろうな....

ほぼ同じ頃に描かれた2枚の作品。原田直次郎が描いた三条実美の方が、黒田清輝の描いた寺島宗則より身分は高かったようだ。三条実美は公家の出身で、明治政府の中心的人物。三条実美が死んだ時には、国葬が盛大に執り行われ、豪華な行列があったようだ。一方の寺島宗則は三条実美ほど豪華な正装ではないが、やはり明治期の大役をつとめた外交官。寺島宗則は薩摩出身だったから、同じ薩摩出身の黒田に肖像画の話が行ったに違いない。

この2人が身につけている服について調べたら面白かった。右の寺島宗則が来ているのは、文官大礼服で、最高の正装で、お役人のユニフォーム。左の三条実美が着ている肩に飾りのある大礼服は爵位を持つ元公家等に許された制服だったようだ。宮内庁の役人などでは制服が微妙に異なり、制服を見ればその人の仕事内容が分かったとのこと。便利だ。
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この2枚の人物がつける勲章についても調べてみた。三条実美のつける3つの勲章。中でも一番上につける勲章が「大勲位菊花大綬章(だいくんい きっか だいじゅしょう)」と呼ばれるもの。最高位である大勲位菊花章頸飾に次ぐ勲章で、主に天皇や皇族が受賞する。昭和天皇ももらっているようだが、三条実美は一般人としてはじめてこの勲章を受賞している。当時の新聞についてブログで書いている方があって知ったのだけど、これらの勲章は七宝でできていて、明治の優れた職人の技術が結集したすばらしい作品だそうだ。

2枚の肖像画から分かることはとても多く、興味深いのだった。私が肖像画を描くときはとても気を使う。喜んでくれるように髪の毛を多く描いたり、皺を減らしたり、脂肪を減らしたりと「若く素敵に見えるように多少加工」するのだけど、この2人の絵は直球見たまんまだ。もっと身長高そうに描くくらいのこともしなかったのはどうしてかなあ。
by office-maki | 2013-09-13 16:57 | 日記 | Comments(0)

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